
「ゼロスタートソーラー」や「0円ソーラー」という言葉を聞いて、多くの方が「本当に無料で太陽光発電が設置できるの?」と疑問に思うでしょう。
結論から言うと、初期費用(太陽光パネルや工事費など)は本当に0円です。
しかし、月々の電気の利用には料金が発生します。
これは、たとえるなら「携帯電話の端末代金0円キャンペーン」に似ています。
端末(太陽光パネル)は無料で手に入りますが、毎月の通話料(電気代)は使った分だけ支払う、という仕組みです。
この「初期費用0円」を実現しているのが、PPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)モデルと呼ばれる仕組みです。
これは、PPA事業者(太陽光発電の会社)が、あなたの家の屋根を借りて太陽光パネルを無償で設置し、発電した電気をあなたに販売するという契約形態です。
つまり、太陽光パネルの所有者はPPA事業者であり、あなたは事業者が作った電気を購入する、ということになります。
事業者は、あなたに電気を販売したり、余った電気を電力会社に売ったりすることで、設置費用を回収していくのです。
これにより、あなたは大きな初期投資をすることなく、太陽光発電のメリットを享受できるわけです。
初期費用はかかりませんが、毎月の支払いが発生します。
具体的にどのような料金がかかるのか、詳しく見ていきましょう。
PPAモデルでは、自宅の太陽光パネルで発電し、家庭で使った分の電気(自家消費分)に対して料金を支払います。
この電気料金の単価は、契約するPPA事業者によって様々ですが、大手電力会社の電気料金単価よりも安く設定されていることがほとんどです。
例えば、電力会社の単価が1kWhあたり30円だった場合、PPA事業者の単価は25円といった具合です。
そのため、日中に電気を使えば使うほど、従来の電気代よりもお得になる可能性があります。
太陽光発電ができない夜間や、発電量が少ない雨天・曇天時は、これまで通り電力会社から電気を購入する必要があります。
そのため、PPA事業者への支払いとは別に、大手電力会社への電気代の支払いも発生します。
ゼロスタートソーラーを導入しても、電力会社との契約が完全になくなるわけではない、という点は覚えておきましょう。
日中に発電したものの、家庭で使い切れずに余った電気(余剰電力)はどうなるのでしょうか。
PPAモデルでは、太陽光パネルの所有者はPPA事業者です。
そのため、余剰電力を売電して得られる収入は、原則としてPPA事業者のものとなります。
自分で費用を払って太陽光パネルを設置した場合は、この売電収入が大きなメリットになりますが、ゼロスタートソーラーではその恩恵は受けられない、という点は大きな違いです。
ゼロスタートソーラーは、長期の契約が前提となるサービスです。
契約前に知っておくべき重要なポイントを解説します。
PPAモデルの契約期間は、10年から20年と非常に長く設定されています。
これは、PPA事業者が初期費用の回収にそれだけの期間を要するためです。
この期間中は、基本的に契約を継続する必要があります。
長い契約期間が満了すると、多くのPPAモデルでは、設置した太陽光発電システム一式が無償であなたに譲渡されます。
譲渡後は、発電した電気を無料で使えるようになり、余った電気を売電すれば収入を得ることも可能です。
ただし、譲渡後のメンテナンス費用(パワーコンディショナの交換など)は自己負担となるため注意が必要です。
契約期間中に引っ越しなどの理由で解約する場合、高額な違約金(残りの期間の料金一括請求など)が発生する可能性が非常に高いです。
そのため、近い将来に転居や家の建て替えの予定がある方には、ゼロスタートソーラーは向いていないと言えるでしょう。
契約前に、解約条件を必ず詳細に確認することが重要です。
太陽光発電を導入するには、ゼロスタートソーラー(PPA)の他に、「自己所有(現金購入やソーラーローン)」や「リース契約」といった方法もあります。
それぞれの料金的なメリット・デメリットを比較してみましょう。
設置方法 | 初期費用 | 月々の支払い | 売電収入 | メンテナンス | 所有権 |
---|---|---|---|---|---|
ゼロスタートソーラー(PPA) | 0円 | 自家消費分の電気代 | 事業者 | 事業者負担(契約期間中) | 事業者(契約満了後譲渡) |
自己所有(購入) | 高額(100万~) | なし(ローン返済) | 自分 | 自己負担 | 自分 |
リース | 0円 | 定額のリース料 | 自分 | 事業者負担(契約期間中) | 事業者(契約満了後選択) |
簡単に言うと、経済的なメリットが最も大きいのは「自己所有」ですが、初期費用がかかります。
「ゼロスタートソーラー」は初期費用を抑えたい方向け。
「リース」は、月々の支払いが定額で、売電収入も得たいという中間的なニーズに応えるものです。
ここまでの情報を踏まえて、ゼロスタートソーラーがどのような人に向いているのかをまとめます。
現在、多くの企業がゼロスタートソーラー(PPAモデル)のサービスを提供しています。
サービスを選ぶ際には、以下のポイントを比較検討することが重要です。
ゼロスタートソーラーは、「初期費用0円」という大きな魅力を持つ一方で、長期契約や売電収入が得られないといった側面もあります。
料金体系は「設置費用は無料だが、発電した電気の利用は有料」と理解することが重要です。
ご自身のライフプランや電気の使用状況、太陽光発電に何を求めるのか(電気代削減か、売電収入か)を明確にし、自己所有やリースといった他の選択肢とも比較しながら、最適なプランを選択してください。